観測単位・実験単位・反復を区別する
このトピックを終えると
測定値を保存した行の単位と、処理条件が割り当てられた実験単位を区別できるようになります。biological replicateとtechnical replicateを分け、反復測定が独立標本数を増やすかを判断するための質問を作れるようになります。
出発点:測定値 12個は標本 12個か
ある研究で四つの独立した培養単位を用意し、各単位で三回ずつ測定したとします。最終表には 12個の値が入ります。では標本数は 12でしょうか。
この質問には数値だけでは答えられません。処理条件がどの単位に割り当てられたか、三回の測定が異なる生物学的単位から得られたのか、同じ単位の反復測定なのかを知る必要があります。観測値数は記録数であり、独立した情報量は研究設計と割当構造に依存します。
四種類の単位を分ける
観測単位
観測単位は、一つの値を一回記録する対象または測定水準です。一枚の画像、一つのwell、ある時点の測定値のように表せます。観測単位はデータ表の行に近い概念ですが、常に同じではありません。一行に複数の測定値をwide形式で保存することもあるためです。
実験単位
実験単位は、処置または条件が割り当てられる最小単位です。独立した培養単位に条件を割り当てたなら、その培養単位が実験単位になります。同じ条件を複数のwellに入れても、実際の割当がより上位の単位で行われたなら、wellの数だけで独立した処置単位を数えません。
ここに、解析前に「処理はどこに割り当てられたか」を記す理由があります。解析法の名称より先にassignmentの水準を確認します。
Biological replicate
Biological replicateは、互いに独立した生物学的単位から得られた反復です。何が独立単位かは研究質問と設計に従って定める必要があり、単にIDが異なることだけでは決まりません。同じ由来から分けた下位測定値が独立した生物学的反復かどうかも、設計記録を確認する必要があります。
Technical replicate
Technical replicateは、測定過程の変動を調べるため、同じ生物学的単位または同じ実験単位で繰り返した測定です。技術的反復は測定の安定性確認に有用ですが、同じ独立単位から得たという事実は消えません。したがって、技術的反復の数をそのままbiological replicateの数に変えません。
表から階層構造を読む
次は一行を一測定として記録したlong-formatの例です。
| condition | culture_id | well_id | measurement_id | value |
|---|---|---|---|---|
| A | C01 | W01 | M01 | 0.82 |
| A | C01 | W01 | M02 | 0.79 |
| A | C01 | W02 | M03 | 0.81 |
| B | C02 | W03 | M04 | 0.91 |
| B | C02 | W03 | M05 | 0.94 |
表のIDは異なる水準を示します。measurement_id は記録を区別し、well_id は測定を行った下位単位を区別し、culture_id はより上位の独立単位候補を示します。しかし、この列だけを見て独立性を自動的に結論づけることはできません。処理の割当と試料作成過程を併せて見る必要があります。
例えば、A条件の三行がすべて culture_id=C01 なら、それら三観測は三つのbiological replicateではありません。反対にC01、C02、C03が独立して条件に割り当てられていたなら、各cultureが独立単位である可能性を設計記録とともに検討できます。
Pseudoreplicationが生じる地点
Pseudoreplicationは、独立していない反復を独立標本のように扱い、情報量を過大評価する問題です。代表的な出発点は、複数の技術的測定を別々のbiological replicateとして数えることです。
これは単なる「行数の誤り」ではありません。標本数をどの水準で数えるか、変動をどの水準で推定するか、条件差がどの単位で観察されたかを混同する問題です。同じ独立単位の反復測定は測定変動を示せますが、新しい独立単位を生み出しません。
だからといって技術的反復を常に捨てる必要はありません。反復測定の目的が測定誤差の確認か、各下位単位が別個の処置と独立した試料を持つかにより、扱い方は異なります。平均で要約するか、階層構造をモデルに反映するか、設計を再確認するかは、研究質問とデータ構造をともに見て決めます。
反復を扱う判断順序
次の順序を記録に残します。
- 条件または処理はどの単位に割り当てられたか?
- outcomeの一つの値はどの単位で測定されたか?
- 同じ上位単位から出た値はいくつか?
- 反復は生物学的変動を表すか、測定過程の変動を表すか?
- 解析の独立単位と報告する標本数をどう定義するか?
これらに答えるとき、データ表の行数を先に数えません。研究ノート、割当記録、試料系譜、データschemaが必要になることがあります。不明なら独立性を任意に仮定せず、design_unknown として残す方が安全です。
小さなschemaで確認する
反復構造は、次のようにデータ契約で表せます。
analysis_unit: culture_id
observation_unit: measurement_id
condition_assigned_at: culture_id
technical_repeat_key: well_id
outcome: valueこのschemaは特定の解析法を強制しません。代わりに、どの水準のIDを基準に独立性を検討したかを示します。condition_assigned_at が空なら、処理条件の比較を始める前に設計記録を補う必要があります。
研究質問に戻って解釈する
「条件AとBのoutcomeは異なるか」という質問に答えるとき、AとBに属する行数ではなく、独立した割当単位の構造が核心です。技術的反復が多ければ各単位の測定安定性をより詳しく見られますが、それだけで条件間の独立比較の根拠が増えるわけではありません。
また、biological replicateという表現も研究の独立性全体を保証する印ではありません。どの単位で独立に生成・割当・測定されたかを記録し、その水準に合う要約とモデルを選ぶ必要があります。ここでまだ平均比較や有意性検定を選ばないのは、解析単位を先に決めなければならないためです。
よくある失敗と点検法
「行が 12個なのでn=12」と書く
行は観測記録数である可能性があります。n が何を数えるかを解析文書に定義しなければ、観測数と独立反復数を混同します。
技術的反復を自動的に削除する
反復測定は測定過程の品質と変動を把握するために使えます。問題は反復を削除することではなく、その役割をbiological replicateと区別しないことです。
ID水準を確認せずに検定法を選ぶ
群ごとの平均を比較するか、階層構造をモデル化するかは、質問と設計により異なります。まず割当単位と反復構造を記録してから方法を選びます。
要点
- 観測単位は値を記録する水準であり、実験単位は条件が割り当てられる水準です。
- biological replicateとtechnical replicateは独立性に関して異なる意味を持ちます。
- 同じ独立単位からの反復測定は行数を増やしますが、独立標本数を自動的に増やしません。
- pseudoreplicationは、データ行、独立情報、解析単位を混同すると発生します。
- 解析法を選ぶ前に、割当水準と反復構造をschemaとして記録する必要があります。
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次の記事では、変数のデータ型、schema、provenanceを整理します。その後 stat-004 で、解析単位が定まったデータを中心・散布・分布で要約します。
参考資料
- Bioconductor OSTA, experimental design: https://bioconductor.org/books/release/OSTA/pages/bkg-exp-design.html
- ASA GAISE Reports: https://www.amstat.org/education/guidelines-for-assessment-and-instruction-in-statistics-education-%28gaise%29-reports
本稿の説明、表、schema、シナリオはBioStatPyが独立して作成した教育用構成です。外部資料の文、表現、例の配列を再現しません。