光で心筋細胞にプライム編集複合体を送達、非ウイルス性の方法で成功

背景
ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPSC-CMs)に、プライム編集(PE)のリボ核タンパク質(RNP)複合体を非ウイルス性の方法で送達した細胞研究が報告された。最適化条件下で測定された編集頻度は最大8.46%だった。
PEはDNA二本鎖切断を起こさずに、精密なゲノム改変を行う技術だ。心筋細胞への適用では、編集ツールを効率よく送達しながら、送達用の遺伝物質がゲノムに組み込まれるのを避ける方法が課題として残っていた。
主な発見
研究チームは、光を利用する光穿孔(photoporation)に基づく送達法にLumiSenseナノ増感剤を用いた。まずHEK293T細胞で細胞質への送達と編集の可能性を確認し、その後、送達が難しいiPSC-CMsに適用した。送達したのはPEタンパク質だけではなく、PE RNP複合体だ。
蛍光イメージングでPE RNPの細胞内への取り込みを確認し、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)でプライム編集頻度を測定した。最適化条件での最大値は8.46%であり、全実験条件の平均や細胞内への取り込み率を示すものではない。入手できた抄録には、標的遺伝子、修正対象の変異、反復数、比較群ごとの結果は記載されていない。
意義と展望
今回の結果は、ヒトiPSC由来心筋細胞にPE RNPをウイルスを使わず物理的に送達し、編集を行える可能性を示している。研究チームは、ゲノムへの組み込みを伴わず、制御可能な送達戦略として提示した。
ただし、細胞での送達・編集結果は、心疾患に対する治療効果や安全性の確立を意味しない。入手できた抄録だけでは、細胞の生存率や機能、標的外編集、動物や患者での効果を確認できない。既存の送達法より性能が高いかどうかも判断しにくい。
出典:Biomedicine & Pharmacotherapy論文抄録
プライムエディット(PE)は二本鎖切断を誘発せずに精密なゲノム修飾を提供します。しかし、心筋細胞への応用は効率的で非統合的な導入戦略の欠如によって制限されています。この研究では、ヒトの誘導多能性幹細胞由来心筋細胞(iPSC-CMs)へのPEリボ核タンパク質(RNP)複合体の非ウイルス導入のための調節可能な光穿孔法を報告します。LumiSenseナノセンシタイザーを用いて、まずHEK293T細胞で細胞質内導入と編集の実現可能性を検証し、その後、難易度の高いiPSC-CMsで効率的な光穿孔を達成しました。蛍光イメージングにより、PE RNPの細胞内取り込みが確認され、ドロップレットデジタルPCRにより、最適化された条件下で最大8.46%のプライムエディット頻度が示されました。この研究は、ヒト心筋細胞へのPE RNP導入のための非統合的で制御可能な物理戦略を示し、心臓疾患のゲノム編集ベースの治療介入の開発のための有望な基盤を提供します。
心筋細胞の遺伝子編集を研究する際は、編集技術だけでなく、ツールを細胞内に届ける方法も検討する必要がある。今回の研究は、ヒトiPSC由来心筋細胞にPE RNPを送達する非ウイルス性の物理的アプローチの可能性を示した。今後の研究では、疾患関連変異を持つ心筋細胞モデルにこの方法を適用できるか検討できる。その際は、標的ごとの編集の再現性、処理後の細胞生存と心筋機能、標的外編集を併せて評価する必要がある。最大8.46%という編集頻度だけでは治療に十分な水準か判断できず、生体内での心臓への送達や患者での治療効果は別途検証すべき課題だ。