CCDC40 mRNAナノ粒子、患者由来気道細胞とゼブラフィッシュで線毛機能を改善

欠損タンパク質の補充による線毛機能回復を検証
CCDC40タンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)をリピドイドナノ粒子(LNP)に封入して送達したところ、患者由来の気道細胞とCCDC40欠損ゼブラフィッシュで線毛機能が改善した。タンパク質の局在回復は一部の細胞で認められ、動物実験の結果は投与経路によって異なった。研究で確認されたのは培養細胞と動物における機能変化であり、患者の呼吸機能を評価した臨床試験とは区別される。
原発性線毛運動不全症(PCD)は、線毛の運動障害によって気道から粘液や病原体を排出する機能が低下する遺伝性疾患である。気道感染の反復は気管支拡張症や慢性呼吸不全につながることがあり、CCDC40の病的バリアントは、ほかの複数の遺伝子型より重度の肺機能低下と関連する。論文によれば、既存の治療は感染管理や分泌物の排出など症状のコントロールが中心で、根本的な異常を修復する治療法はまだない。
CCDC40は、関連タンパク質が線毛内部の骨格である軸糸に局在するのを助ける。研究チームは、細胞に必要なタンパク質を作らせるためにmRNAを供給する方法を検証した。
患者由来細胞で線毛運動と局所的な粒子輸送が改善
研究チームは、CCDC40の両アレルに病的バリアントを持つ患者5人の鼻腔呼吸上皮細胞を、気液界面で培養した。将来的な吸入投与を念頭に、培養上皮の頂端面にLNP-CCDC40-mRNAを週1回、6週間投与した。
4回投与後、患者由来細胞の線毛打頻度は、対照mRNA群で3.25 ± 0.08 Hz、CCDC40 mRNA群で9.48 ± 0.22 Hzだった。健康なドナー6人の細胞では8.98 ± 0.08 Hzで、CCDC40 mRNA群と健康対照群との間に統計的有意差はなかった。6回投与後にも線毛運動の改善が観察され、蛍光粒子の輸送も改善した。ただし、粒子の移動は観察視野内の局所的な輸送を示すもので、培養面全体で粘液線毛クリアランスが回復したことを意味しない。
免疫蛍光解析が可能だった4人由来の培養細胞では、CCDC40と関連タンパク質CCDC39、GAS8/DRC4、DNALI1が軸糸に再局在する様子が観察された。軸糸内のCCDC40局在回復は多線毛細胞の10–74%で確認され、平均は31.5%だった。ドナー間の差は大きかった。この割合の分母は解析対象となった多線毛細胞であり、全気道細胞への送達効率や患者の治療成功率を示すものではない。治療後の超微細構造は電子顕微鏡で評価されておらず、内部構造全体が再建されたかは確認されていない。
動物では投与経路により結果が異なり、臨床検証が課題
CCDC40欠損ゼブラフィッシュでは、単細胞期胚への注入と、受精後30時間から薬剤を含む培養液に幼生を曝露する方法が試された。培養液への曝露は嗅窩に限定した処置ではなく、注入も嗅窩への直接投与ではない。受精後5日の評価では、胚注入群で嗅窩の線毛打頻度と粒子移動速度が野生型に近づき、流れの方向性も改善した。
一方、培養液曝露群では、10 ng/μL、160 ng/μLのいずれも、未処置の欠損群と比べて線毛打頻度に有意差はなかった。高濃度の160 ng/μLでは、線毛が運動する領域と粒子移動速度が改善したが、流れの方向性の回復は部分的だった。このように投与方法で結果が異なるため、胚注入の成果をヒトの吸入治療効果に一般化するのは難しい。
本研究は、欠損タンパク質の補充が線毛機能の改善につながる可能性を示した前臨床段階の概念実証である。使用した細胞は少数のドナー由来で、回復の程度にも差があった。研究チームは論文で、CCDC40の病的バリアントを持つ人を対象とした第I相試験を計画していると述べた。臨床試験が実際に開始されたことや、ヒトで安全性・有効性が実証された結果は示されていない。
出典:American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology掲載論文全文、DOI: 10.1093/ajrcmb/aanag034。
原発性繊毛運動障害(PCD)は、遺伝的に異質な疾患で、成人期に重度の気管支拡張症と慢性肺不全を伴う破壊的な気道疾患を引き起こします。CCDC40の病原性変異は、他の多くのPCDタイプと比較して、肺機能の低下がより重篤であることと関連しています。現在、根本的な疾患メカニズムを修正する治療法は存在しません。本研究では、ヒトCCDC40をコードするリピドイドナノ粒子製剤mRNA(LNP-CCDC40-mRNA)の有効性を、in vitro(ヒト細胞)およびin vivo(ゼブラフィッシュ)における構造的・機能的欠損の是正手段として検証しました。空気-液体インターフェースで培養した、5名のCCDC40欠損患者由来のヒト鼻呼吸上皮細胞と新たに作製した脊椎動物モデル(ccdc40-/-ゼブラフィッシュ)にLNP-CCDC40-mRNAを投与しました。CCDC40欠損細胞は高速ビデオ顕微鏡および免疫蛍光顕微鏡で解析されました。ccdc40-/-ゼブラフィッシュの嗅覚窩繊毛は高速ビデオ顕微鏡と流体流れアッセイで解析されました。外因性LNP-CCDC40-mRNAをCCDC40欠損細胞に局所適用すると、内因性CCDC40が発現し(繊毛細胞の10〜74%)、CCDC40関連タンパク質(CCDC39、GAS8/DRC4、DNALI1)の軸索統合が可能となります。一貫して、処理されたCCDC40欠損細胞の繊毛拍動頻度は有意に増加し、健康な対照細胞と同等となりました。さらに、蛍光粒子の繊毛輸送が改善されたことを示しました。ヒトLNP-CCDC40-mRNAの注入または局所適用により、ccdc40-/-ゼブラフィッシュの繊毛運動性が有意に向上し、嗅覚窩で方向性流れが確立されました。CCDC40欠損呼吸細胞およびゼブラフィッシュにおけるLNP-CCDC40-mRNAの生物学的有効性について、in vitroおよびin vivoで構造的・機能的エビデンスを提供します。本結果に基づき、CCDC40の病原性変異を有する個人を対象としたin vivoヒト試験(フェーズ1試験)が計画されています。
本研究は、CCDC40バリアントに関連する原発性線毛運動不全症に対し、欠損タンパク質を補う吸入治療候補の開発根拠を示す。具体的な活用例として、候補製剤を患者由来気道細胞に適用し、軸糸内のタンパク質局在、線毛運動、粒子輸送を併せて評価する方法が挙げられる。線毛打頻度と粒子輸送を分けて測定すれば、機能改善の範囲をより正確に判断できる。実際の治療につなげるには、ヒトの気道に十分量が届くか、反復投与が安全か、効果がどの程度持続し、肺機能改善につながるかを確認する必要がある。他のPCD遺伝子型へ広げる際にも、遺伝子ごとの製剤と送達性能を別途検証しなければならない。