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稲・トウモロコシゲノムに11kbの巨大DNAを高精度で挿入…次世代植物ゲノム編集技術「PrimeRoot」が初実現

Nature Biotechnology·2026年8月10日AI キュレーション
稲・トウモロコシゲノムに11kbの巨大DNAを高精度で挿入…次世代植物ゲノム編集技術「PrimeRoot」が初実現
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背景

気候変動と人口増加に伴い、農業生産性の向上と有害環境への耐性を持つ作物の開発が世界中で活発に進められている。従来は作物ゲノムの修正にCRISPR-Cas9技術が主に利用されていたが、遺伝子を切断したり小規模な塩基を変更したりするには有効でも、作物の有用性を大幅に改善するためには数千塩基(kb)以上の巨大遺伝情報を正確な位置に挿入する作業には限界があった。

外遺伝子を植物体内にランダムに挿入する伝統的な遺伝子組換え作物(Genetically Modified Organism, GMO)技術は、意図しない遺伝子破壊や不均一な発現を引き起こしやすい傾向があった。植物細胞内の動的な遺伝子修復メカニズムのため、挿入成功率も極めて低かった。農業的に価値の高い多遺伝子や大型調節配列を植物ゲノムの特定領域に正確に組み込む新たな精密ゲノム工学プラットフォームが求められていた。

核心的発見

中国科学院遺伝・発達生物学研究所の高彩霞(Caixia Gao)教授研究チームは、植物ゲノム内で希望する部位に大容量DNAを精密に移植できる「Prime editing-mediated Recombination of Opportune Targets(PrimeRoot)」技術を開発した。この編集ツールは、植物細胞内で効率的に動作するように最適化された「plant-optimized Prime Editor(ePPE)」と、外部DNAを正確な方向に挿入する部位特異的再結合酵素を融合させたシステムである。ePPEが標的ゲノム位置に再結合酵素認識部位をまず刻印し、再結合酵素がその部位を媒介として外部遺伝物質をランダム複製なしに精密に統合する仕組みで動作する。

研究チームはPrimeRootの性能を検証するために、稲とトウモロコシゲノムを対象とした。実験結果として、植物ゲノム安全域(Genomic Safe Harbor, GSH)内に最大11.1キロ塩基(kb)に及ぶ大規模遺伝子配列を欠落や標的逸脱なしに精密に挿入する成果を上げた。これは単なる塩基単位の簡単な修正を越えて、大規模代謝経路を制御したり、多数の外部性質を植物ゲノムに一度に組み込む可能性を実証したデータである。

効率性を高めるため、プロセス最適化作業も並行して行われた。研究チームは遺伝子編集物質を一時的に注入するのではなく、時間差を置いて2回に分けて注入する順次形質転換システムを確立した。この新しい順次方式は編集効率を従来比で2~4倍ほど向上させ、稲とトウモロコシゲノムで最大8%程度の精密挿入効率を達成する基盤となった。実際に、稲の紋枯病抵抗性遺伝子pigRと関連プロモーターを稲ゲノムのGSHに正確に配置し、実際に抵抗性を持つ個体を成功裏に作出した。

意義と展望

今回の研究は、作物品種改良のスピードを高め、植物合成生物学の領域を拡大する足掛かりとなると期待されている。従来の育種技術や初期の遺伝子剪定技術では、複数の遺伝子が絡む病害虫抵抗性や極限気候対応性質を一度に誘導するのは困難だった。しかしPrimeRootを導入すれば、有用遺伝子を指定した位置に正確に配置することで、ゲノム編集作物の安全性と農業的生産性を同時に確保できる。

ただし、農業現場への即時適用には解決すべき課題もある。6%~8%程度の挿入効率は、実験室段階を越えて大規模生産を実現する産業現場の観点ではまだ低い評価である。さまざまな気候環境で栽培された植物体内でも挿入遺伝子が長期的に正しく機能するかを明らかにする農家実証試験を経る必要がある。また、細胞内に長期間残留して引き起こす潜在的な副作用を減らすため、一時的発現システムを完成させることが重要な前提条件とされている。

Nature Biotechnology, Published online: 10 August 2026; doi:10.1038/s41587-026-03295-xAuthor Correction: Precise integration of large DNA sequences in plant genomes using PrimeRoot editors

💬なぜ重要なのか:

この技術は、気候危機への対応を目的とした多機能作物を短期間で育成するシナリオに直接的に適用可能である。例えば、稲に病害虫抵抗性遺伝子を移植するだけでなく、乾燥耐性や栄養成分強化遺伝子群を含む10kb規模の遺伝子パッケージを製作し、その後PrimeRootを起動して植物ゲノム内特定の安全域に一度の工程でこれを挿入する。過去には各性質を持つ系統を個別に交配して単一品種にまとめると5~10年かかっていたが、新しい遺伝子編集ツールを使えば数カ月で多性質を持つ種子を確保できる。病害虫に強く、気候乾燥化にも耐えられる高付加価値農作物を迅速に市場に投入する実質的な通路が開かれたことになる。

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