レトロン組換え編集は細菌15種で機能、効率は種ごとに異なった

大腸菌以外でも機能する編集ツールを求めて
レトロン(retron)を介した組換え編集は、3つの細菌門に属する試験対象15種すべてで機能した。ただし、すべての種で高い効率が得られたわけではない。Nature Biotechnologyに掲載された今回の研究は、レトロンを基盤とするツールの適用範囲を広げるとともに、宿主によって編集効率が大きく異なり、一部では追加の最適化が必要になることを示した。
大腸菌では、ゲノムを迅速かつ柔軟に改変する編集技術が発展してきた。しかし研究者らによると、こうした技術の多くは他の細菌種で試されていない。大腸菌で得られた成果を他の細菌にも応用できるのか。今回の研究はこの問いから始まった。
研究に用いたリコンビトロン(recombitron)は、ドナーDNAを産生するよう改変した細菌レトロンと、一本鎖DNA結合・アニーリングタンパク質を組み合わせたゲノム編集ツールである。研究者らは、レトロンを介した組換え編集を大腸菌以外の多様な細菌に適用できるかを調べた。
15種すべてで機能したが、高効率は一部に限られた
試験対象はプロテオバクテリア門(Proteobacteria)、バシロタ門(Bacillota)、アクチノミセトタ門(Actinomycetota)に属する計15種だった。系統的に異なる細菌群で、編集ツールが機能するか、どこまで利用できるかを調べたことが研究の要点だ。
編集機能は試験したすべての種で確認された。編集効率が20%を超えたのは6種で、そのうち3種では40%、2種では90%を上回った。各基準に該当する種の数は重複する。残る9種の効率は0.015–7.4%にとどまった。
15種すべてで機能したという観察結果は、適用範囲の広さを示す。ただし、どの細菌でも同じ水準の高効率編集が可能だという意味ではない。実用性を評価する際は、効率が低かった9種の結果も考慮する必要がある。
研究者らは一部の宿主で、リコンビトロンの構成拡張やオペロン・菌株の変更も試した。抄録によると、一部の宿主で編集率を高めるには種ごとの変更が必要だった。共通のツール構成を出発点にしても、宿主に応じた調整が求められる可能性がある。
適用範囲の拡大と宿主ごとの検証課題
今回の研究は、主に大腸菌を対象に発展してきた編集ツールを他の細菌へ広げるための実験的根拠を加えた。新しい細菌種で遺伝子機能を調べる研究者にとって、レトロンを介した組換え編集を候補ツールとして検討する根拠が広がった。実際の研究で使うには、ツールが機能するかどうかと、研究目的に足る編集効率が得られるかをそれぞれ評価する必要がある。
検討した資料は書誌情報と抄録に限られる。これらの資料には、個々の種・菌株、編集標的、効率の測定条件、変更ごとの改善幅は示されていない。既存の編集法より優れている、あるいは従来編集できなかった微生物の改変に初めて成功したという結論を裏付ける情報もない。具体的な適用を判断するには、対象宿主の実験条件と最適化結果をさらに確認する必要がある。
研究の範囲と編集効率は、Europe PMCに収載された論文抄録で確認できる。
Nature Biotechnology, Published online: 23 April 2026; doi:10.1038/s41587-026-03076-6リトロンを基盤とするゲノム編集システムは、細菌の種間を超えて機能します。
新しい細菌宿主で遺伝子機能を研究する研究者は、今回の結果を編集ツール選択の出発点として活用できる。特定の遺伝子変異を導入する場合は、論文で該当種の適用例と実験条件を確認したうえで、自らの菌株で編集率を検証する研究計画を検討できる。15種すべてで機能した結果は適用範囲を広げたが、9種の効率が0.015–7.4%だったことは、宿主ごとの検証と最適化の必要性も示している。製品開発の迅速化や安全性向上は、今回確認した抄録で評価された成果ではない。