PE-STAR、DNA修復の調節とSOSに基づく選別で大腸菌のプライム編集効率を改善

細菌におけるプライム編集の限界
プライム編集は、DNA二本鎖切断を起こさずに遺伝子を精密に改変する技術です。研究チームは、DNA修復の調節と編集細胞の選別を組み合わせたPE-STARを大腸菌で開発し、特定の編集条件下で約80–90%の編集効率を報告しました。この数値は、選別後の集団において目的の編集が占める割合を示します。
細菌では、編集中間体を処理する酵素やDNA修復経路が編集結果に影響します。従来の方法では効率が低いか、改変できる配列の長さに制約がありました。研究チームは、大腸菌MG1655から3つのエキソヌクレアーゼ遺伝子sbcB、exoX、xseAを欠失させたES95株を基盤に、PE-STARを構築しました。
修復経路の補強とSOSに基づく選別
3つの酵素を除くと、逆転写で作られる編集DNA鎖の分解を抑えられます。研究チームはさらに、形質転換後の培養時間を延長し、RecJ酵素を過剰発現させました。著者らは、RecJが競合する未編集鎖の5′方向への処理を促し、編集鎖がゲノムに取り込まれやすい条件を作るというモデルを提示しています。
編集細胞の割合を高めるため、DNA損傷に応答するSOS回路も導入しました。2本のDNA鎖それぞれに一本鎖切断を生じさせるPE3を、LexA制御下のガイドRNA発現と連結し、MAD7ヌクレアーゼが毒素CcdBの遺伝子を持つ負の選択用プラスミドを除去するよう設計しました。その後、毒素の発現を誘導すると、プラスミドを保持した未編集細胞を減らせます。この過程で高まる編集割合を、編集細胞の生存確率と解釈してはなりません。
効率は編集の種類、長さ、位置によって異なりました。xylBへの1塩基挿入は特定条件下で82.41%に達し、5 bpおよび10 bpの欠失は約90%に達しました。一方、10 bp挿入では0.44%から6.78%へ、30 bp挿入では11.76%から27.40%へ改善しました。このシステムは最大46 bpの挿入・欠失・置換に対応しましたが、すべてが同じ効率を示したわけではありません。galKとlacZでは、従来のPE2と比べて最大16倍の向上が観察されました。xylBの効率は選別後に回収したコロニーの標的領域の配列解析で、galKとlacZの効率はコロニーの色の表現型で評価しました。
大規模な遺伝子経路の組み込みと残された課題
長いDNAカセットの挿入には、別の組換え工程を用いました。まずPE-STARで染色体に46 bpのattB認識部位を導入し、その後、Bxb1インテグラーゼを使って3.2 kbの緑色蛍光タンパク質(GFP)カセットと8.0 kbのリボフラビン生合成経路をそれぞれ組み込みました。選別後に調べたコロニーでは、すべて正確な組み込みが確認されました。この100%という値は、投入した全細胞での成功率や、二段階の工程全体の成功率を意味しません。
リボフラビン経路を組み込んだ株では、96時間の培養中、培養上清のリボフラビン濃度が最大3.23 mg/Lと測定されました。ただし、細胞密度の指標である600 nmの光学密度(OD600)は、対照群の3.27に対して経路組み込み株では2.72と低く、増殖への負担も認められました。今回の結果は、大腸菌で精密編集と代謝経路の導入を結び付けた実験室での実証です。他の細菌での性能や産業規模での生産性は、今後の検証課題として残ります。
研究方法と結果は、Nucleic Acids Research論文の公開全文で確認できます。DOI: 10.1093/nar/gkag285。
Prime editingはDNA二本鎖切断なしで正確なゲノム改変を可能にしますが、バクテリアでの応用は効率が低く、編集サイズが小さいという制限があります。本研究では、Escherichia coliにおけるPrime editingを強化するためにPE-STAR(Prime Editing with SOS-Triggered and RecJ-Augmented Repair)を開発しました。3つの阻害的な3'→5'エキソヌクレアーゼ(SbcB、ExoX、XseA)を除去することで編集された鎖の保持が改善され、形質転換後の培養時間を延長することで編集効率が向上しました。RecJの過剰発現はフラップ解消とギャップ拡大時の5'方向処理を強化し、逆転写された編集鎖の組み込みへと修復をバイアス付けました。編集細胞を濃縮するために、SOS応答性カウンターセレクション回路を組み込み、PE3に伴う二重ニッキングをLexA依存的なgRNA発現と連結させ、毒素CcdBをコードするプラスミドを標的とすることで未編集細胞を除去しました。PE-STARは短断片の改変で80〜90%の編集効率を達成し、部位間で最大16倍の向上を示しました。このプラットフォームは最大46 bpまでの挿入、欠失、置換を高効率で実現しました。さらに、Prime editingでattB部位を導入し、Bxb1インテグラーゼによる組換えを行うことで、GFPレポーターやリボフラビン生合成経路を含む3.2 kbおよび8.0 kbのカセットを、スクリーニングされたコロニー中で100%の組換え成功率で染色体に統合することに成功しました。PE-STARはバクテリアのPrime editingの効率と機能的範囲の両方を拡大し、プログラム可能なゲノム工学を推進します。
高効率な細菌編集は、合成生物学やバイオプロセスに用いる菌株の設計に役立つツールです。本研究では、短い配列を改変するプライム編集と、長い遺伝子経路を導入するBxb1組換えを結び付けました。研究者は大腸菌の染色体にattB部位を導入した後、リボフラビンなどの代謝産物の生合成経路を組み込み、生産の有無と増殖への負担を併せて評価できます。ただし、高い編集割合には選別工程が含まれ、挿入・欠失・置換の性能にも差があります。実際の菌株開発では、目的の編集と位置に合わせた条件確認が必要です。リボフラビン生産の検出は経路の機能を示しますが、商業生産性やプロセスの経済性の改善を立証した結果ではありません。