SOD1変異に関連するALS患者6人の第1相試験で、siRNA候補RAG-17の標的抑制を確認

背景
SOD1遺伝子変異に関連する筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病)患者6人に、低分子干渉RNA(siRNA)候補薬RAG-17を反復投与した第1相試験で、脳脊髄液中のSOD1タンパク質の減少と初期の安全性データが報告された。神経損傷マーカーも低下したが、運動機能低下の遅延や生存利益が証明されたわけではない。前臨床および臨床の結果はNature Medicineに発表された。
SOD1は、スーパーオキシドジスムターゼ1をコードする遺伝子である。一部の変異は、異常に折りたたまれたタンパク質の毒性機能獲得により、運動ニューロンの損傷に関与すると考えられている。このため、この患者群を対象にSOD1発現を低下させる治療法が開発されてきた。同じ標的を狙う薬剤として、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトフェルセンがある。
siRNAはRNA干渉によって標的遺伝子の発現を抑えるが、中枢神経系へ効果的に送達するのは難しい。RAG-17はSOD1標的siRNAに、非標的の化学修飾補助オリゴヌクレオチド(ACO)を組み合わせた候補薬である。細胞への取り込みと組織分布を促すよう設計されたSCAD送達プラットフォームを採用している。
主な発見
前臨床試験の結果は、投与経路や組織によって異なった。症状が現れた雌のSOD1 G93Aマウスに生後126日目と151日目の2回、脳室内投与したところ、400 μg高用量群の生存期間中央値は対照群より75.8%延長した。これは動物モデルで確認された生存期間の延長であり、ヒトでの治療効果とは区別する必要がある。
カニクイザルには実験1日目と15日目に2回、髄腔内投与した。1回50 mgの用量で、腰髄のSOD1メッセンジャーRNA(mRNA)は最大91%減少した。同じ用量で大脳皮質の最大減少率は70%を超えたが、脳と脊髄全体で抑制率が一様だったわけではない。
ヒト試験は単施設、非盲検、非ランダム化の用量漸増第1相試験で、安全性と忍容性を主要評価項目とした。SOD1変異が確認された成人6人を3人ずつの2群に分け、60 mgまたは90 mgから開始した。用量を30 mgずつ増やし、5人は維持用量150 mg、1人は180 mgを投与された。各コホートの総投与回数はそれぞれ7回と6回で、維持期の投与間隔は2カ月だった。
重篤な有害事象は報告されなかった。2人に一過性の軽度な筋肉のぴくつきがあり、そのうち脂肪肝と肝機能異常が既にあった1人では、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇も認められた。研究者らは筋肉のぴくつきを治療関連事象と評価し、ALT上昇については薬剤と基礎状態の両方に関連する可能性があるとした。
脳脊髄液(CSF)中のSOD1タンパク質は、ベースラインから第1コホートで240日目に平均69%、第2コホートで210日目に平均56%減少した。軸索損傷マーカーである血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の試験終了時の平均減少率は、それぞれ62%と52%と報告された。ただし、1人では初期に低下したNfLが240日目にベースライン付近まで再上昇し、研究者らはこの参加者をNfLの縦断的集計から除外した。これらの平均値を6人全員に一貫した反応があったと解釈すべきではない。
意義と今後の展望
今回の結果は、ヒト中枢神経系の標的に作用するsiRNAの薬理作用を、CSF中SOD1の低下とバイオマーカーの変化で確認したものだ。ただし、機能評価の変化は患者ごとに異なり、一部では呼吸関連スコアが低下した。観察終了までに死亡や侵襲的人工呼吸はなかったが、対照群がないため、薬剤による生存利益とは判断できない。
患者数が少なく、SOD1変異と疾患経過にはばらつきがあり、治療前の進行率も後ろ向きに推定された。CSF細胞検査を経時的に実施していないため、無症候性の炎症反応も否定できない。長期安全性、機能低下の遅延、投与間隔を延ばせる可能性は、今後のランダム化比較試験で検証すべき課題として残る。トフェルセンより優れていることを示す直接比較データもない。
試験設計と結果は、原著全文および抄録・書誌情報で確認できる。
Nature Medicine, Published online: 15 July 2026; doi:10.1038/s41591-026-04491-7In a human clinical trial, repeated administration of an oligonucleotide–siRNA conjugate targeting SOD1 exhibited a favorable safety profile in six patients with SOD1-ALS.
RAG-17研究は、SOD1変異が確認されたALS患者で、中枢神経系siRNA治療の標的への作用を臨床的に評価するための初期的な根拠を示した。今後の試験では、CSF中SOD1と血漿NfLを運動・呼吸機能、生存指標とあわせて追跡し、バイオマーカーの低下が実際の機能維持につながるかを確かめる方法が考えられる。NfLの再上昇と投与間隔の関係も検証課題である。今回の維持投与は2カ月間隔であり、より長い間隔でも標的抑制と安全性が保たれるかは確認されていない。他の神経系標的へのプラットフォーム展開も研究開発上の可能性だが、候補薬ごとに送達、安全性、有効性を個別に検証する必要がある。