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糸状菌用に特化したプライムエディター「fPE7max」が隠された生合成経路を覚醒させる

Nature Biotechnology·2026年7月2日AI キュレーション
糸状菌用に特化したプライムエディター「fPE7max」が隠された生合成経路を覚醒させる
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背景

糸状菌はペニシリンをはじめとする数多くの医薬品や産業用酵素の供給源である。ゲノム配列解読の普及に伴い、現在発現していない「サイレント生合成遺伝子クラスター(BGC)」が糸状菌のゲノムに多数存在することが明らかになってきた。問題は、この潜在能力を実験的に活性化することが極めて困難である点だ。既存のCRISPR-Cas9ベースの編集は二本鎖切断(DSB)に依存しており、糸状菌は本来相同組み換え効率が低いため、正確な塩基置換や大規模な挿入・欠失を達成することが難しい。

プライム編集は、DSBを起こさずに目的の配列を直接挿入する次世代ゲノム編集技術だが、哺乳類細胞向けに最適化された既存のシステムを糸状菌にそのまま適用すると、編集効率が著しく低下する。

主要な発見

研究チームは、糸状菌の細胞環境に合わせて多層的なエンジニアリングを施すことで、糸状菌特異的プライムエディター「fPE7max」を開発した。これには、逆転写酵素-Cas9ニッカーゼ融合タンパク質のコドン最適化、核移行シグナル(NLS)の再配置、プライム編集ガイドRNA(pegRNA)構造の安定化などが含まれる。

fPE7maxは、単一のプラットフォームを使用して、1塩基置換、キロベース(kb)スケールの挿入、およびマルチkbの欠失を実行できる。特に、AspergillusPenicilliumなどのさまざまな産業上重要な糸状菌種で機能することが示され、種特異的なツールを個別に構築しなければならないというこれまでの制限を克服した。

研究者たちは、多面的な代謝調節因子の翻訳制御領域を正確に編集することで、このツールの威力を実証した。転写レベルではなく翻訳レベルで調節配列を微調整することにより、従来の過剰発現やノックアウト戦略ではアクセスできなかった生合成経路を選択的に活性化することに成功した。その結果、これまで報告されていなかった新しい真菌由来の代謝物が発見された。単一の調節因子を精密に操作することで、複数の下流経路が同時に活性化された。

意義と展望

糸状菌ゲノムにおけるサイレントBGCは、既知の活性クラスターの数倍に達すると推測されている。fPE7maxは、この広大なケミカルダークマターを体系的に探索するためのツールを提供する。DSBなしで編集が行われるためゲノム不安定性が低いという事実や、ある種で実証されたpegRNA設計原則を他の糸状菌種へ容易に移転できる点も実用上の利点である。

ただし、プライム編集の効率は標的配列の二次構造や細胞周期の段階によって異なる場合があるため、普遍的なパイプラインとなるためには、種および遺伝子座特異的な最適化データの蓄積が必要不可欠である。大規模な挿入の場合、編集の精度と挿入サイズのトレードオフという課題も、将来的に定量的解明が求められる点として残されている。

Nature Biotechnology, Published online: 02 July 2026; doi:10.1038/s41587-026-03219-9We developed the prime editor fPE7max, which is optimized for filamentous fungi and enables precise genome engineering — from single-base substitutions to kilobase-scale insertions and multi-kilobase deletions, across diverse species. Editing of translation-regulatory elements for a pleiotropic metabolic regulator unlocked previously inaccessible biosynthetic pathways and uncovered new fungal metabolites.

💬なぜ重要なのか:

真菌由来の天然物は、抗生物質、抗真菌薬、免疫抑制剤、コレステロール低下薬など、主要な医薬品グループの原料となる。fPE7maxがサイレント経路を体系的に活性化できれば、新しい天然物ライブラリーの構築や新規創薬候補の発見を大いに加速させることが可能になる。

また、産業用発酵株の改良にも直接活用できる。従来はランダム変異とスクリーニングに依存していたプロセスを塩基レベルでの精密な編集に置き換えることが可能となり、目的の代謝物の収量を同時に高めつつ副産物を抑制する菌株を合理的に設計できるようになる。特に、翻訳制御領域を微調整する戦略は、必須遺伝子を完全に除去することなく代謝フラックスのリダイレクトを可能にするため、細胞の生存維持と代謝経路の方向転換を両立させる産業用菌株の設計に適している。

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