アルゴリズム設計のH5 mRNAワクチン、マウスで複数系統への交差中和反応を誘導

H5変異株に対応する抗原設計
アルゴリズムで設計したH5鳥インフルエンザmRNAワクチンは、マウスで複数のH5系統の偽ウイルスを中和する抗体応答を誘導した。ただし、比較対象のワクチンをすべての株で上回ったわけではない。一部の最近の株では中和反応が低く、生ウイルス感染を防ぐかどうかも試験されていない。
H5ウイルスは種を越えて伝播し、変異を続けるため、パンデミック対策研究の主要な対象となっている。この研究では、単一株の抗原を使うワクチンと比べて、アルゴリズム設計抗原が中和反応の範囲を広げられるかを検討した。
研究チームはヒト感染例からH5ヘマグルチニン(hemagglutinin、HA)の配列を収集し、Epiアルゴリズムで3種類の候補抗原を作製した。そのうち、基準株A/Jiangsu/NJ210/2023のHAと最も配列が類似する候補をeH5に選んだ。AlphaFold 3で予測したeH5の三量体構造は基準HAと類似していた。これは計算による予測であり、実験で実際のタンパク質構造を解明した結果とは区別する必要がある。
交差中和の広がりと株ごとの差
研究チームは、eH5または基準株H5抗原をコードするmRNAを脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)に封入した。どちらの製剤もN1-メチルシュードウリジンを含む修飾mRNAを用いた。6–8週齢の雌BALB/cマウスに、10 μgを14日間隔で2回筋肉内投与し、対照群には生理食塩水を投与した。血清は初回接種後14日目と28日目に採取した。
28日目の偽ウイルス中和試験では、eH5群は2014–2021年に分離された2.3.4.4b系統の4株に対し、H5群より有意に高い中和抗体応答を示した。別系統である2.3.4.4のH5N6と2.2.1のH5N1に対しても、応答は有意に高かった。複数のH5系統を対象とする交差中和反応が確認された。
一方、2022年以降に分離された2.3.4.4b系統の6株では結果が分かれた。3株に対する中和反応はH5群と同程度で、A/Colorado/134/2024、A/Colorado/191/2024および基準株に対しては低かった。交差反応の範囲が広がっても、個々の株への中和反応が常に強まるとは限らない。
初回接種から28日後に採取した脾臓細胞をHAペプチドで刺激すると、eH5群とH5群はいずれも生理食塩水群より高いサイトカイン分泌細胞応答を示した。両ワクチン群の応答は同程度だった。脾臓のH5抗原特異的免疫グロブリンG(immunoglobulin G、IgG)抗体分泌細胞数も、両ワクチン群で同程度だった。この結果だけでは、リンパ節の記憶B・T細胞が長期に維持されることや、抗体の親和性成熟が起きることまでは証明できない。
防御効果と作用機序は今後の検証課題
脾臓のプロテオーム解析では、B細胞活性化、抗原提示、T細胞恒常性に関連するタンパク質や経路について、2つのワクチン群の間に違いが認められた。研究チームは、これらを免疫応答の幅を説明する手がかりの候補として提示した。ただし、この解析で示されたのは相関であり、特定の経路が交差中和反応を引き起こすという因果関係は、別の機能実験で検証する必要がある。
生ウイルスを用いた感染チャレンジ試験は行われておらず、感染予防や生存の改善は確認されていない。既存のインフルエンザ免疫がワクチン応答に与える影響も評価されなかった。ヒトでの安全性・予防効果と長期免疫も未確認である。研究チームはパンデミック対策用の備蓄候補となる可能性を提案したが、実用上の価値はこれらの追加検証を経て判断する課題として残る。研究はInternational Journal of Molecular Sciencesに掲載された。設計過程と実験結果は論文原文で確認できる。
Oncology & Infectious Disease Core, Published May 2026. DOI: [Source Generated Data]
Summary: 従来の卵ベース不活化インフルエンザウイルスワクチンに内在する製造遅延と卵適応変異を回避し、本比較的非ヒト霊長類(NHP)研究は、脂質ナノ粒子(LNP)内に製剤された四価、非変異mRNAワクチンプラットフォームを評価します。季節性インフルエンザのヘマグルチニン(HA)プロファイルである先祖的H1N1、H3N2、そして二系統のインフルエンザB系統をエンコードしたプログラム的ヌクレオチドペイロードは、加速された先天免疫シグナル伝達カスケードを誘発します。抗ウイルス防御、細胞移動、抗原提示動態を制御する転写ネットワークの迅速な計算的活性化に特徴付けられ、プラットフォームは中間単球集団を構造的に拡大します。同時に、血清中のHA特異的抗体価は認可されたフレームワーク(VaxigripおよびFluad)と同等または上回る一方で、mRNA構造はドレナージリンパ節内部に直接HA特異的記憶B細胞およびT細胞リポジトリの頻度を著しく高め、普遍的な親和性成熟と将来のスケーラブルな免疫付与に最適化された高忠実度ゲノムベースラインを提供します。
H5パンデミック対策ワクチンの開発では、特定株に対する強い応答を誘導する能力と、複数系統を認識する範囲の両方を評価する必要がある。この研究は、アルゴリズム設計抗原を次段階の前臨床候補として比較する根拠となる。例えば開発チームは、eH5がより高い中和反応を示した過去の株と、反応が低かった最近の株の双方を今後の感染チャレンジ試験に含め、実際の防御範囲を確かめられる。脾臓プロテオーム解析で見つかった候補経路も、別の機能実験で検証する対象となる。備蓄ワクチンとしての価値は開発上の可能性にとどまり、生ウイルスに対する防御効果、既存免疫の影響、ヒトでの安全性・免疫原性を確認して初めて判断できる。