鎌状赤血球症の遺伝子治療、工程改善後に3人の症状が軽減…長期発現は課題

工程改善後に減少した症状と輸血負担
重症鎌状赤血球症の成人4人を対象としたレンチウイルス遺伝子治療の第1/2相試験で、細胞採取と遺伝子導入の工程を改善した後に治療を受けた3人では、血管閉塞性クリーゼと輸血負担が減少した。ただし、血管閉塞性クリーゼがなくなったわけではなく、治療用ヘモグロビンの発現の維持にも患者間で違いがあった。本研究は、遺伝子導入だけでなく、長期生着と発現の維持も治療成績を左右する課題であることを示している。
患者自身の細胞に治療遺伝子を追加
鎌状赤血球症は、HBB遺伝子変異によって生じる異常ヘモグロビンHbSが、酸素が不足した条件で重合し、赤血球を硬く変形させる疾患である。これにより血管閉塞と、赤血球の破壊である溶血が起こる。自家遺伝子治療は患者自身の造血幹細胞・前駆細胞を用いることで、ドナー確保の制約と移植片対宿主病のリスクを避けようとする方法である。
米国UCLAの単施設で実施された本研究は、非無作為化・非盲検試験で、25–29歳の患者4人について移植後24カ月までの結果を報告した。患者は治療前、年間11–12回の血管閉塞性クリーゼを経験し、定期的に赤血球輸血を受けていた。主要評価項目は安全性と遺伝子改変細胞製品の製造可能性であり、遺伝子マーキング、治療用ヘモグロビンの発現、臨床転帰も評価した。
研究チームは、赤血球の鎌状化を抑えるよう設計されたβAS3-グロビン遺伝子を、レンチウイルスベクターで細胞に追加した。これは既存のHBB変異を直接修復する遺伝子編集とは異なる方法である。患者はブスルファンによる前処置を受けた後、自身の遺伝子改変細胞の投与を受けた。
ベクターの残存と遺伝子の働きは同じではなかった
最初の患者には、骨髄から採取した細胞と初期型ベクターが用いられた。移植後の遺伝子マーキングは低く、HbAS3タンパク質は検出されず、臨床的利益は限定的だった。
その後、採取前の輸血・赤血球交換を導入し、プレリキサホルで動員した末梢血から細胞を採取するよう工程を変更した。ベクターをより小型の構造に変更し、遺伝子導入促進剤も使用した。複数の要素を同時に変更したため、各変更の寄与をこの試験だけで切り分けることはできない。
改善工程で治療を受けた3人の顆粒球におけるベクターコピー数(VCN)の最高値は約0.5–2.0だった。VCNは細胞あたりのベクターコピー数を示す指標であり、この範囲が追跡期間を通じて維持されたことを意味しない。1人では24カ月まで遺伝子マーキングとHbAS3発現が比較的安定していた。別の患者ではベクターのマーキングが維持されていたにもかかわらず治療遺伝子の発現が大きく低下し、残る患者ではマーキングと発現の両方が低下した。研究者らは、マーキングが維持されても発現が低下した患者では転写抑制、両方が低下した患者では長期生着の不足または遺伝子改変細胞の消失の可能性を挙げたが、原因は特定しなかった。
臨床的改善の範囲と残る限界
改善工程で治療を受けた3人では、年間の血管閉塞性クリーゼがそれぞれ12回から3回、11回から1.5回、12回から2回に減少した。抄録では、このうち2人が輸血非依存になったと報告されたが、その状態が続いた期間は明記されていない。4人全体の治療前後の臨床指標の差は、統計学的に有意ではなかった。
4人全員が救済移植を行わずに造血機能を回復した。ベクター関連の重篤な有害事象や、挿入に伴う腫瘍の発生は観察されなかった。ただし、ブスルファン投与に合致する有害事象があり、1人にグレード3の粘膜炎が発生した。少数患者を2年間観察した結果から、長期安全性を確定することはできない。
本研究は早期終了となり、このベクターの追加開発は行われない。研究者らは、臨床試験でより高い有効性を示した他の承認遺伝子治療薬が利用可能になったことを終了理由として説明した。これは本試験で治療法を直接比較した結果ではない。小規模・非無作為化という限界の中で、本研究は、細胞製造から生着、発現維持までを一続きに最適化する必要があるという開発上の教訓を示している。
出典:Blood Advances論文全文、PubMed抄録。
鎌状赤血球症(SCD)は単一遺伝子疾患であり、自己遺伝子治療が同種移植に対するより安全な根治的代替手段を提供する可能性があります。本稿では、抗鎌状β-グロビンをコードするLenti/G-βAS3-FBレンチウイルスベクターを用いた第I/II相試験の結果を報告します。この試験はClinicalTrials.gov(NCT02247843)に登録されています。本単一施設研究では、重症SCD患者4名の成人を対象に治療を実施しました。最初の患者はオリジナルのLenti/βAS3-FBベクターと初期プロトコルで治療され、臨床応答は不十分でした。その後のプロトコル改良では、プレビザフォル動員による末梢血アフェレーシスと採取前の赤血球アフェレーシスを組み合わせた造血幹・前駆細胞(HSPC)採取の改善、及びトランスダクションエンハンサーを組み込んだ最適化レンチウイルスベクターの使用が行われました。全患者は骨髄抑制的ブスルファン条件付けを受けた後、遺伝子修飾自己HSPCの輸注を受けました。主要評価項目は安全性と実現可能性、二次評価項目は遺伝子マーキング、治療用ヘモグロビンの発現、臨床アウトカムでした。全患者が救助移植なしで造血回復を達成しました。最初の患者は遺伝子マーキングが低く(ピークベクターコピー数[VCN] 0.035)、HbAS3発現が検出されず、臨床的利益は最小限でした。対照的に、最適化プロトコルで治療された3名は、より高く持続的な遺伝子マーキング(顆粒球ピークVCN約0.5〜2.0)と持続的なHbAS3発現を示しました。これらの患者は血管閉塞危機と輸血必要量の一部減少を経験し、2名は輸血非依存となりました。挿入性腫瘍形成は観察されませんでした。本試験は、持続的な遺伝子発現を実現するために最適化されたベクターデザインとトランスダクションプロトコルが必要であることを強調しています。この特定のベクターは今後追求されませんが、本研究は遺伝子治療プロトコル開発に重要な知見を提供します。
本研究は、治療遺伝子を細胞に導入することと、その遺伝子を長期にわたり十分に働かせることが別々の課題であることを示している。ベクターのマーキングが維持されても発現が低下した患者がいたため、VCNだけで治療の持続性を判断するのは難しい。研究者にとっては、細胞の採取・製造条件とともに、長期生着、RNA・タンパク質発現、臨床経過を追跡する必要があるという意味を持つ。ただし、複数の工程を同時に変更したため、特定の改善要素の効果は確定できない。一部患者でみられた症状と輸血負担の軽減は今後の開発に参考となる兆候だが、前処置の毒性と効果の不完全さが残っており、安全な治癒の証拠とは解釈できない。