バイオNTech(BNTX)が、ワクチン「コミナティ」の販売不振により1,860人を削減し、抗がん剤事業に注力。

ワクチン売上の大幅な減少による大規模な組織再編
ドイツの革新的なバイオ企業であるバイオNTech(BioNTech, BNTX)は、新型コロナウイルス感染症パンデミック終息後、ファイザー(Pfizer, PFE)と共同開発したmRNAワクチン「コミナティ(Comirnaty、有効成分:トジナメラン、標的:SARS-CoV-2スパイクタンパク質)」の売上が大幅に減少したため、大規模な人員削減を実施しています。同社は、ドイツのイダー=オーバーシュタイン(Idar-Oberstein)、マールブルク(Marburg)、テュービンゲン(Tübingen)、およびシンガポールの製造拠点を2027年までに閉鎖または売却し、全従業員の22%に相当する約1,860人を削減する予定です。すべての新型コロナウイルスワクチンの生産業務は2026年末までにファイザーに移管され、これはパンデミック特需の終焉に対応し、流動性を維持するための不可欠な財務戦略です。
抗がんパイプラインへの戦略的な転換
今回の大規模な人員削減により、バイオNTechは2029年までに年間約5億ユーロのコストを削減し、次世代の抗がんパイプラインの開発に集中投資する計画です。同社は、mRNAベースの抗がんワクチンおよび細胞治療であるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)治療薬BNT211の臨床試験に研究リソースを集中させています。さらに、創業者であり、ワクチン開発の主要人物であるウグル・シャヒン(Uğur Şahin)とオズレム・テュレジ(Özlem Türeci)が2026年末に経営の第一線から退き、新しいmRNAスタートアップを設立することになり、バイオNTechは完全な第2期腫瘍学(Oncology)専門企業へと転換していきます。
臨床試験の失敗と規制上の障壁がもたらしたバイオベンチャーの解雇ドミノ
中小のバイオベンチャーも、臨床試験の失敗と規制当局による承認拒否により、深刻な組織再編の圧力を受けています。ビスタジェン・セラピューティクス(Vistagen Therapeutics, VTGN)は、社会不安障害(SAD)の治療薬である鼻腔スプレー「ファセジエノール(fasedienol, PH94B、標的:ペリン受容体)」が2025年12月の第3相臨床試験(PALISADE-3)で主要評価項目の達成に失敗したため、従業員の20%を削減しました。また、抗がん専門のバイオテックであるレプリムン・グループ(Replimune Group, REPL)は、黒色腫治療候補であるオンコリティック免疫療法薬RP1(vusolimogene oderparepvec、標的:HSV-1)とニボルマブ(nivolumab)の併用療法が2026年4月に米国食品医薬品局(FDA)から2回目の最終補完要求書(CRL)を受け、全従業員の相当数である224人を解雇せざるを得ませんでした。
大手製薬会社の先行的な財務防衛とR&Dの再編
このような解雇の流れは、中小ベンチャーにとどまらず、資金力のあるグローバル大手製薬会社(Big Pharma)にも広がっています。武田薬品(Takeda Pharmaceutical, TAK)は、今後の新薬の発売と研究開発(R&D)投資を促進するために、13億ドル規模の全社的な組織再編プログラムの一環として、米国マサチューセッツ州などで600人以上の人員削減を計画しています。メルク(Merck & Co., MRK)も、年間売上250億ドルに達する超大型ブロックバスター免疫抗がん剤「キイトルーダ(Keytruda、有効成分:ペムブロリズマブ、標的:PD-1)」の特許切れ(Patent Cliff)に備え、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン「ガーダシル(Gardasil)」の需要の鈍化に対応するために、グローバル従業員の8%の削減を推進し、先行的なコスト削減に取り組んでいます。
バイオテック業界の解雇の鈍化にもかかわらず、バイオNTechの1,860人の解雇は、新型コロナウイルスワクチンの市場縮小に伴う財務構造再編の必然性を示しており、これは年間5億ユーロのコスト削減効果をもたらし、短期的な財務健全性の改善につながります。具体的には、バイオNTechがBNT211などの第1/2相段階のmRNA抗がんパイプラインにリソースを集中させることで、モデルナ(Moderna)およびキュアバク(CureVac)との次世代抗がんワクチン市場の主導権競争が本格化すると予想されます。一方、ビスタジェンのファセジエノールの第3相臨床試験の失敗と、レプリムンのRP1のFDA最終補完要求書(CRL)の受領による組織再編は、後期臨床段階のリスクが企業の存続と直接結びついていることを証明し、ベンチャーキャピタル(VC)による後続投資の停滞を深刻化させています。さらに、メルクのガーダシルの売上停滞と、キイトルーダの2028年の特許切れに対応するための先行的な8%の削減は、グローバル大手製薬会社もR&Dの効率性最大化とコスト削減に全力を注いでいることを示しています。その結果、今回の人員構造再編は、バイオセクター全体の玉石混交の状況を加速させ、プラットフォーム技術を中心としたリソースの再配分を促す中長期的な転換点となるでしょう。
ソース: BioPharma Dive (rss)
https://www.biopharmadive.com/news/biotech-layoffs-pharma-drug-jobs/819802/